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ノベルゲーム「弔師-とむらいし-」プロローグ

目次

プロローグ「安らかならぬ魂」

ノベルゲーム「弔師-とむらいし-」のプロローグ台本です。

シナリオライティングの処女作になりますが、個人的によく執筆できた作品だと感じています。

ぜひ短編小説としてお楽しみください。

1. 旅立ちの朝 ~日常と予感~

☐☐☐-背景:101.村(昼)

○○○-BGM:001.村

☆☆☆-SE効果音:軽井沢の野鳥たち1

NA>朝靄が漂う山間の集落、和光村。朝露に濡れた屋根が朝日を浴びて輝き始めた頃、慈(じん)の家からは既に元気な声が聞こえていた。

△△△-立ち絵表示:302.小夜-笑顔

☆☆☆-SE効果音:ニュッ1 https://soundeffect-lab.info/sound/anime/mp3/nyu1.mp3

小夜>兄上、これ持っていって!

NA>妹の小夜(さよ)が、手作りの巾着を差し出す。十六になったばかりの彼女は、兄を見上げながらニッコリ笑った。

△△△-立ち絵表示:100.慈-通常

小夜>中に塩と薬草を入れておいたから。もしもの時のために。

△△△-立ち絵表示:101.慈-笑顔

NA>慈は優しく微笑んで受け取った。二十二歳にして既に村で一目置かれる存在になった光重流の師範代の彼は、隣の西方村へ剣術指南のため、今日一日がかりの旅に出かけるところだった。

慈>ありがとう、小夜。でも大丈夫だよ、日が落ちる前には戻ってくるから。

NA>慈が家紋の入った袴を整え、父から受け継いだ大業物「光明」を腰に差していると、母が台所から顔を出した。

△△△-立ち絵削除:302.小夜-笑顔

母>慈、朝ご飯をしっかり食べていきなさいよ。あと、柏餅を包んであるから、道で食べるといいわ。

☆☆☆-SE効果音:ニュッ1 https://soundeffect-lab.info/sound/anime/mp3/nyu1.mp3

慈>うん、ありがとう母さん。

NA>母の包みを受け取り、慈は玄関へ向かった。
戸口では父が腕を組み、黙って息子を見つめていた。
和光村の浄土真宗の門徒でもあり、光重流剣術道場の師範である彼は、無口だけど、その目には息子への信頼と誇りがあふれていた。

△△△-立ち絵表示100.慈-通常

慈>行ってくるよ、父さん。

NA>父は頷き、ただ一言。

父>仏の慈悲を忘れるなよ。

NA>玄関を出ると、紅丸が尻尾を振って駆け寄ってきた。

△△△-立ち絵表示:201.紅丸-笑顔

黒と茶色の毛並みが美しい体躯の犬は、慈の幼なじみであり忠実な相棒だ。

慈>紅丸、今日はここでみんなを守っててくれよ。

△△△-立ち絵削除:201.紅丸-笑顔

△△△-立ち絵表示:202.紅丸-怒り

△△△-立ち絵削除:100.慈-通常

△△△-立ち絵表示:104.慈-驚き

NA>慈が頭を撫でると、紅丸は一度低く唸り、何かを訴えるように慈の袖を引っ張った。

慈>どうした?ついてきたいのか?

△△△-立ち絵削除:202.紅丸-怒り

△△△-立ち絵表示:203.紅丸-悲しみ

紅丸>クゥン。

NA>紅丸は再び袖を引っ張る。

△△△-立ち絵削除:104.慈-驚き

△△△-立ち絵表示:101.慈-笑顔

慈>そうか……お前も行きたいのか。よし、じゃあついてこい!

△△△-立ち絵削除:203.紅丸-悲しみ

△△△-立ち絵表示:201.紅丸-笑顔

NA>紅丸は満足そうに鼻を鳴らし、長いしっぽをこれでもかと振りまわした。
家の前には、村の若者たちが何人か、慈を見送りに集まっていた。
みんな慈の道場での弟子たちだ。

弟子A>師範代、いってらっしゃい!

弟子B>西方村の連中に光重流のすごさ、見せつけてやってください!

弟子C>お土産、忘れないでくださいね!

NA>慈は笑顔で、弟子たちの肩をポンポン叩きながら答えた。

△△△-立ち絵削除:101.慈-笑顔

△△△-立ち絵表示:100.慈-通常

慈>その前に、留守中の稽古をサボるなよ。基本の型をしっかりな!

NA>穏やかな表情の下に厳しさを隠した言葉に、若者たちはピシッと背筋を伸ばした。
慈はそんな彼らを見て満足げに頷き、村の出口へと歩き始めた。
村の入り口に差し掛かったとき、長老の弥助が杖をついてヨタヨタと近づいてきた。
老人の顔には珍しく緊張の色が浮かんでいる。

長老>慈や、ちょっと聞いてくれんか?

慈>長老、どうしたんですか?

NA>弥助は周りをキョロキョロ見回し、声をひそめた。

長老>最近な、見たことない風体の連中が、山を下りて行くのを見かけたって噂があるんじゃ。真っ黒な服で、顔を隠しとったらしい。山賊とも違う感じで…なんか胸騒ぎがするんじゃ。

NA>慈は眉をひそめた。
実は紅丸も今朝から落ち着きがなかった。
何か関係があるのだろうか。

慈>長老、確かに不思議な話です。でも、旅のお坊さんとかかもしれませんよ。

長老>そうだといいんじゃがのう……

NA>長老は言いかけて止め、頭を振った。

長老>いや、気にするな。わしの勘違いかもしれん。行っといで。

NA>慈は頷き、手を合わせて長老に別れを告げた。

慈>南無阿弥陀仏。

NA>村を後にしながら、慈たちは振り返って故郷を見つめた。
朝日に照らされた村は、いつもと変わらない平和な姿だった。
浄土真宗の門徒が集まる和光村——
「仏が光を和らげて衆生と共にいる」という名の由来どおり、穏やかで信仰心の篤い村だ。そんな日常の景色を胸に刻み、彼は山道を下り始めた。
ただ……長老の言葉が頭から離れない。

△△△-立ち絵削除:100.慈-通常

△△△-立ち絵削除:200.紅丸-通常

○○○-BGM:001.村削除

☐☐☐-背景101.村(昼)削除

暗転——

2. 帰路 ~異変の兆候~

☐☐☐-背景105.道端(夜)

○○○-BGM002.道ばた

☆☆☆-SE効果音:足音

△△△-立ち絵表示:101.慈-笑顔

NA>西方村での剣術指南を終え、慈たちはルンルン気分で山道を登っていた。
隣村の若者たちの熱心さに感心して、いくつかの技を教えることができた充実感でいっぱいだった。

慈>あの若い漁師の息子、なかなかやるな。次は父さんに一緒に来てもらおうかな!

NA>そんなことを独り言ちながら歩いているうちに、すっかり日が沈んで、辺りは薄暗くなっていた。
幸い、今夜は月明かりが道を照らしている。

△△△-立ち絵削除:101.慈-笑顔

△△△-立ち絵表示:100.慈-通常

△△△-立ち絵表示:200.紅丸-通常

慈>紅丸、少し急いで村へ帰ろうか!腹も減ったからな。

紅丸>ワォォン!!

NA>慈たちは足取りを速め、家族が待つ村へと急いだ。

暗転——

○○○-BGM002.道ばた削除


山道を登ること一時間ほど、突然紅丸が足を止め歯をむき出しにし威嚇し出した。

△△△-立ち絵削除:200.紅丸-通常

△△△-立ち絵表示:202.紅丸-怒り

△△△-立ち絵削除:100.慈-通常

△△△-立ち絵表示:103.慈-悲しみ

慈>どうした、紅丸?

NA>急に攻撃態勢をし出した紅丸を見て、ただ事ではないと直感がそう言っている。

何かがおかしい。
周りの森が、妙に静かだった。
夜の山は普通、虫の音や、時々聞こえる動物の気配でいっぱいなのに。
でも今、彼の耳に届くのは風の音だけ。
それも何だか冷たくて、不自然に響いていた。

△△△-立ち絵削除:103.慈-悲しみ

△△△-立ち絵表示:102.慈-怒り

○○○-BGM003.戦闘

慈>なんだ…この感じ。

NA>背筋がゾクッとした。
慈は本能的に腰の「光明」に手をやり、警戒しながらまた歩き始めた。
いつもなら「気のせいだろ」と笑い飛ばせたかもしれないけど、今朝の長老の言葉が妙に引っかかる。
村が近づくにつれ、変な感じはどんどん強くなった。
風に乗って、かすかに……何かの匂いがする。

慈>血……の匂い?

NA>心臓がドキドキと早く打ち始めた。
慈は走り出した。
月明かりの下、山道を駆け上がる彼の影は長く伸び、恐ろしい予感と一緒に闇に溶けていった。

慈>みんな……無事でいてくれ!!紅丸、急ぐぞ。

紅丸>ウォオオン!!!

△△△-立ち絵削除:202.紅丸-怒り

△△△-立ち絵削除:102.慈-怒り

☐☐☐-背景105.道端(夜)削除

○○○-BGM003.戦闘削除

暗転――

3. 惨劇 ~変わり果てた故郷~

☐☐☐-背景102.村(夜)

○○○-BGM004.恐怖

☆☆☆-SE効果音:足音

△△-立ち絵表示:100.慈-通常

△△△-立ち絵表示:200.紅丸-通常

NA>和光村の入り口に着いた慈の目に、最初に飛び込んできたのは、ガラ空きの柵門だった。
普通なら夜になると閉めるはずの門が、誰かに乱暴に開けられたみたいに、片方は地面に倒れていた。
そして、鼻をつく金属っぽい匂い。
血の匂いだ。
慈は息を呑み、光明を抜きながらドキドキしながら村の中へと足を踏み入れた。
月明かりは雲に隠れて、辺りはますます暗く、不気味な静けさの中に沈んでいた。
最初の家は村の木こりの家族が住む家だった。
扉は壊され、中からは何の物音も聞こえない。慈がおそるおそる中を覗くと―

△△△-立ち絵削除:100.慈-通常

△△△-立ち絵削除:200.紅丸-通常

△△△-立ち絵表示:103.慈-悲しみ

慈>ッ……!

言葉が出なかった。
床に横たわる木こりとその家族。
不自然な姿勢で倒れ、わずかな月明かりが、彼らの体から流れ出る赤黒い液体を照らしていた。
慈は震える足を無理やり動かし、次の家へ、またその次の家へと走った。

☆☆☆-SE効果音:アスファルトの上を走る1

どの家も同じだった。
開け放たれた扉、散らかった家具、そして……倒れた村人たち。

慈>なんで…こんな……

NA>誰がこんなことを?どうして?疑問が頭の中をグルグル回るけど、答えはどこにもない。
心臓が喉まで飛び出しそうな恐怖と一緒に、慈は自分の家へと走った。
家の前で彼は立ち止まった。
扉は他の家と同じように乱暴に開けられていた。
震える手で扉を押し開ける。

慈>父さん!母さん!小夜!

NA>返事はない。
月が雲間から顔を出し、家の中をぼんやり照らした。
そこには―

慈>ああっ……!

NA>慈の叫びが夜の静けさを引き裂いた。
畳の上に横たわる家族の姿。
父は玄関近くで、きっと最後まで家を守ろうとしたんだろう、刀を手にしたまま倒れていた。
その奥には母が小夜を守るように、寄り添って横たわっていた。
慈は家族の傍らに膝をついた。
信じられない光景に頭を抱えた。
朝、笑顔で見送ってくれた家族が、血まみれで横たわっている。
あまりにも突然の残酷な現実に、慈の頭はパニックだった。

△△△-立ち絵削除:103.慈-悲しみ

△△△-立ち絵表示:102.慈-怒り

慈>なんで、なんでこんなことが……!

NA>悲しみと怒りが入り混じった叫びが、慈の口から漏れた。
慈は父の傍らに膝をつき、冷たくなった手に触れた。
光重流の達人である父でさえ勝てなかった相手―それは一体何者なんだ。
しばらくそうしてボーっと家族の亡骸を見つめていた慈だったが、彼は立ち上がった。

慈>全ての村人の様子を確認しなきゃ。
まだ生きてる人がいるかもしれない。

慈>紅丸、ほかの様子を見てこよう。生きている人がいるかもしれない。

△△△-立ち絵表示:203.紅丸-悲しみ

紅丸>クゥン。

NA>悲しみをグッと押し殺し、慈は再び村を回り始めた。
でも、生き残った人は見つからない。
村全体が死の静けさに包まれていた。
村の中央広場に着いたとき、月が完全に顔を出して、一面の惨状を照らし出した。
広場には何人もの村人たちが倒れていた。まるで何かから逃げようとして集まり、そこで力尽きたみたいに。
慈はその場に膝をつき、顔を覆った。
全てを失った絶望感が彼を包み込む。

△△△-立ち絵削除:102.慈-怒り

△△△-立ち絵表示:103.慈-悲しみ

慈>ああ……阿弥陀様……こんな……

△△△-立ち絵削除:203.紅丸-悲しみ

△△△-立ち絵表示:202.紅丸-怒り

紅丸>グルゥゥ!!

NA>慈>紅丸の威嚇のあと、突然カサッという音が聞こえた。
小さな足音。
彼は顔を上げ、周りを見回した。

誰だ! 

NA>声に答えるように、月明かりの中、黒い服を着た人影が現れた。
長い黒い服に身を包み、顔の下半分を布で覆っている。
手には血に濡れた短刀を握っていた。
慈の目に怒りの炎が灯った。

△△△-立ち絵削除:103.慈-悲しみ

△△△-立ち絵表示:102.慈-怒り

慈>おまえらがやったのか……!

NA>黒装束の男は答えなかった。
すぐさま彼の後ろから、さらに二人の同じ格好の奴らが現れた。
三人は黙ったまま慈を取り囲み始めた。

慈>なるほどな、父さんは家族を守りながらお前ら三人を相手にしたわけか。

慈は光明を構え、敵をにらみつけた。

慈>答えろ!なぜ村を、なぜ俺の家族を!

NA>それでも敵は黙ったまま。
そして、合図でもしたかのように、いっせいに慈へ襲いかかってきた。

☐☐☐-背景102.村(夜)削除

○○○-BGM004.恐怖削除

△△△-立ち絵削除:102.慈-怒り

△△△-立ち絵削除:202.紅丸-怒り

暗転――

4. 死闘 ~生者と『死者』~

☐☐☐-背景102.村(夜)

○○○-BGM003.戦闘

△△△-立ち絵表示:102.慈-怒り

NA>短刀を振り回す敵に対し、慈は光明を閃かせた。
怒りと悲しみが彼の動きを鈍らせることはなかった。
むしろ、今までより冴えわたっていた。

慈>光重流、光波一閃!

☆☆☆-SE効果音:刀で斬る5

NA>最初の敵の胸をズバッと斬り裂く。
剣先から血がポタポタ滴り落ちる。
倒れる敵を見ることなく、慈はもう次の敵へと向かっていた。
残りの二人は慎重に距離を取り、お互いに目配せした。
そして、二手に分かれて慈を挟み撃ちにしようとする。

慈>卑怯者が……!

NA>慈は怒りの声を上げながらも冷静さを失わなかった。

慈>喰らうがいい。光重流、光月旋!!

☆☆☆-SE効果音:刀で斬る1

NA>超スピードで回りながら剣を振るい、両側から襲いかかる敵に同時に斬りかかった。一人は首筋をバッサリと切り裂かれ、その場に崩れ落ちた。
もう一人は肩口に傷を負いながらも後ろに下がり、距離を取る。

慈>話せ!なんでこんなことを!

NA>慈は生き残った敵に詰め寄る。
敵はまだ黙ったまま、慈の周りを回り始めた。
すると突然、呪文のような言葉をブツブツ唱え始めたのである。

△△△-立ち絵削除:102.慈-怒り

△△△-立ち絵表示:100.慈-通常

慈>何を…?

NA>慈が警戒を強める中、予想だにしないことが起きた。
地面に倒れていたはずの村人の死体が、ウゥゥという不気味な唸り声と共に、ゆっくりと動き始めたのだ。

△△△-立ち絵削除:100.慈-通常

△△△-立ち絵表示:104.慈-驚き

慈>な、なんだよ……?

NA>最初に立ち上がったのは、道場の年長弟子だった男だった。
でも、その目はうつろで、生気がない。
続いて長老や、他の村民たちもぎこちない動きで立ち上がり始めた。

△△△-立ち絵削除:104.慈-驚き

△△△-立ち絵表示:100.慈-通常

慈>これは…何の術だ!

NA>黒装束の残った奴は、顔の下半分が布で隠れていてもわかるくらい、ニヤリと笑みを浮かべた。

黒装束>穢れよ、死者の魂よ、我が命に従え……

NA>その言葉とともに、動き出した死体たちがいっせいに慈へと襲いかかってきた。

△△△-立ち絵削除:100.慈-通常

△△△-立ち絵表示:102.慈-怒り

慈>やめろ!!

NA>慈は叫んだ。

慈>長老、康介、みんな…俺だよ!慈だぞ!

NA>でも、かつての村人たちの目に認識の色はない。
ただボーっとした目で、まるでゾンビみたいに腕を伸ばし、慈に襲いかかってくる。
慈は光明を構えながらも、ためらった。
目の前にいるのは敵じゃなく、ついさっきまで生きてた村の人たちだ。
友達であり、先生であり、家族だった人たち。

慈>くっ……!

NA>長老の爪が慈の頬をカッと引っ掻き、血が垂れる。
恐怖と戸惑いの中、慈は心を決めた。

慈>すいません……光重流秘技、慈光!

NA>涙を流しながら、慈は剣を振るった。
光重流の秘技「慈光」——敵を殺すのではなく、苦しみから解放する技だ。
長老の体が再び地面にドサッと倒れる。
続いて襲いかかる弟子たちも、悲しい顔で切り倒した。
その混乱に乗じて、黒装束の残党が逃げ出そうとするのが見えた。

慈>逃がさない!

NA>慈は死者たちの間をスイスイと駆け抜け、逃げる敵の背中にバッと飛びかかった。
光重流の達人の速さは常人の目には捉えられないほどだ。

慈>答えろ!これは何の術だ!なんで村を襲った!

NA>組み伏せられた敵は、最後の力を振り絞るように呪文を唱え始めた。
慈はためらわず光明をブスッと突き立てた。

黒装束>ぐっ……

NA>敵の体から力が抜けていく。
死ぬ間際、布で覆われた口元から、かすかな言葉が漏れた。

黒装束>これが……穢土…繰り師の…力……

慈>なんだと?

NA>それが何を意味するのか、慈にはサッパリ分からなかった。
でも、この言葉が、後の彼の旅の大きな手がかりになることを、彼はまだ知らなかった。
黒装束の奴が息を引き取り、敵に止めを刺した慈は静かに立ち上がった。

△△△-立ち絵削除:102.慈-怒り

△△△-立ち絵表示:100.慈-通常

○○○-BGM001.村

慈>南無……

NA>その言葉だけが、戦いの終わりを告げる。
慈は立ち上がり、周りを見回した。
月明かりの下、また動かなくなった村人たちの死体と、倒した敵の死体が横たわっている。
恐ろしい戦いは終わったが、慈の心に残ったのは深い悲しみと、大きな疑問だった。

慈>一体、何が起きたんだ……

△△△-立ち絵表示:203.紅丸-悲しみ

紅丸>クゥン

NA>弱々しい鳴き声が聞こえた。
振り返ると、紅丸が心配そうに近づいてきていた。
慈は駆け寄り、再び犬を抱き上げた。
紅丸は慈の顔を舐め、何かを訴えるように唸った。
その目は悲しみに満ちていたが、同時に強い意志も感じられた。

慈>そうか…おまえも見たんだな、この恐ろしい出来事を。

紅丸>クゥン……

紅丸は静かに慈の腕の中で身を寄せた。

☐☐☐-背景102.村(夜)削除

○○○-BGM001.村削除

△△△-立ち絵削除:100.慈-通常

△△△-立ち絵削除:203.紅丸-悲しみ

暗転――

5. 弔いと旅立ち ~夜明けの誓い~

☐☐☐-背景102.村(夜)

○○○-BGM001.村

△△△-立ち絵表示:100.慈-通常

NA>月が西の空に傾き始める頃、慈は村の一角で鍬を打ち込んでいた。
土を掘り返す音だけが、静かな村に響く。

☆☆☆SE効果音:手で穴を掘る1

NA>一晩中、慈は休まずに作業を続けた。
全ての村人のためにお墓の穴を掘り、一人一人を丁寧に埋めていく。
親しい村人たち、道場の弟子たち、そして最後に――家族のためのお墓を。

△△△-立ち絵表示:200.紅丸-通常

NA>紅丸は傍らで横になりながら、時々立ち上がっては慈の作業を見守っていた。
慈は黙々と続ける。
悲しみをかみしめながら、時に涙を流しながら……それでも彼は掘り続けた。
一人一人の遺体を埋めるたび、慈は「南無阿弥陀仏」と唱えた。
夜が明け始める頃、慈は作業を終えた。

☐☐☐-背景102.村(夜)削除

☐☐☐-背景101.村(昼)

村を眺めると、もはや墓地となっていた。
きちんと並んだ新しい土の山の前で、慈は深く頭を下げた。

慈>みんな安らかに眠れ。

NA>目の前で起きた恐ろしいこと――死者が生き返り、生きてる人を襲う光景が、慈の頭から離れない。
あの黒装束が最後に言った「穢土繰り師」という言葉。
それが何なのか、今は知る由もなかった。
ひとつ言えることは、死者の安らぎを奪う忌まわしい力であるということ……

☆☆☆SE効果音:002.軽井沢の野鳥たち1

東の空が白み始め、やがて朝日が山の端から顔を出した。
その光が慈の泥だらけになった顔を照らす。
彼は手で顔を拭い、最後に家族のお墓の前に正座した。

慈>父さん、母さん、小夜…ごめん。俺が家を留守にしたせいで……

NA>言葉が詰まる。
どんな言葉も、失われた命を取り戻すことはできない。
紅丸が慈の隣に座り、静かに鼻を鳴らした。

慈>そうだな、紅丸。おまえも一緒に旅に出よう。

NA>犬は力強く頷いたように見えた。
その瞳には悲しみと共に、決意の光が宿っていた。
慈は再び家族の墓に向き直った。

慈>約束するよ。絶対に真相を突き止めてみせる。なぜ俺たちの村が……

NA>慈は静かに手を合わせた。

NA>彼にははっきりした計画なんてなかった。「穢土繰り師」というヒントだけで、どこから探せばいいのかも分からない。でも、一つだけ確かなことがあった。

NA>もはや彼には帰るべき故郷がない。残されたのは、真相を追い求める旅だけだった。慈は立ち上がり、荒縄で縛った簡単な荷物を肩にかけた。
父の形見の「光明」を腰に差し、最後に村を見渡す。
朝日に照らされたたくさんのお墓が、彼を見送っていた。

慈>南無……

NA>その言葉が突然口をついた。
浄土真宗の教えを受けてきた彼だが、この言葉には特別な意味があるのか、心のどこかから浮かび上がったその言葉に、慈は何だか救われた気がした。

慈>南無……

NA>慈はクルッと踵を返し、山を下る道へと足を進めた。
紅丸が彼の傍らに寄り添って歩く。
二人はやがて朝霧の中に消えていった。

△△△-立ち絵削除:100.慈-通常

△△△-立ち絵削除:200.紅丸-通常

NA>こうして、「弔師」慈と相棒の紅丸の旅は始まった。
死者を安らかに眠らせる者と、死者を生き返らせる「穢土繰り師」との戦いの物語は、この瞬間から幕を開けたのである。

☐☐☐-背景101.村(昼)削除

○○○-BGM001.村削除

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